PEEK樹脂とは?特徴・耐熱性・用途・他樹脂との比較
2025.12.27
2025.12.27
2025.12.27
技術情報
スーパーエンプラの代表格「PEEK」の基礎から、他樹脂との比較・加工方法・グレード選定まで
PEEK(ピーク)は、耐熱性・耐薬品性・機械強度を高いレベルで兼ね備えた、スーパーエンジニアリングプラスチックの代表格です。一方で、材料価格が高く成形条件も厳しいため、「本当にPEEKが必要か」「どのグレードを選ぶべきか」の見極めが重要になります。本記事では、PEEK樹脂の特徴と物性、メリット・デメリット、PPS・PEI・PTFEなど他樹脂との比較、成形・加工方法、グレードの選び方までを、樹脂材料の専門商社の視点で解説します。
PEEK(ピーク)は、「PolyEtherEtherKetone(ポリエーテルエーテルケトン)」の略称です。プラスチックの中でも最高レベルの性能を持つ「スーパーエンジニアリングプラスチック」の代表格として、世界中で広く採用されています。
分子構造は、ベンゼン環(アリール基)がエーテル結合・ケトン結合で連なった形をしており、繰り返し単位の中に「エーテル・エーテル・ケトン」の順で結合が並ぶことが名前の由来です。PEEKは、PEK・PEKK・PEKEKKなどとともに「PAEK(ポリアリールエーテルケトン)」と呼ばれるポリマー群に属します。
また、PEEKは結晶性の熱可塑性樹脂です。加熱すると溶けるため射出成形や押出成形が可能で、結晶構造を持つことで高い耐熱性・耐薬品性・耐疲労性を発揮します。1978年に英国ICI社(当時)によって開発されて以来、その圧倒的な信頼性から、過酷な環境下での金属代替材料として不動の地位を築いています。
PEEKが「スーパーエンプラの王様」と呼ばれる理由は、以下の優れた物理的・化学的特性にあります。
熱可塑性樹脂として最高クラスの耐熱性を誇ります。
PEEKは、ほぼすべての有機溶剤や化学薬品に対して高い耐性を示します。高温環境下でもその耐性は維持されますが、濃硫酸などの一部の強酸には侵されるため、使用環境の確認が必要です。
広い温度範囲で高い強度と剛性を維持します。
燃えにくい性質を持っており、難燃剤を添加しなくてもUL94 V-0の規格を満たします。また、燃焼時の発煙量や有毒ガスの発生が極めて少ないことも、航空機内装材などで重宝される理由です。
PEEKは、樹脂単体(ニート)のほか、ガラス繊維(GF)や炭素繊維(CF)で強化したグレードが広く使われています。代表的な物性の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 単位 | PEEK(非強化) | GF30%強化 | CF30%強化 |
|---|---|---|---|---|
| 比重 | – | 1.30 | 約1.5 | 約1.4 |
| ガラス転移温度 | ℃ | 143 | 143 | 143 |
| 融点 | ℃ | 343 | 343 | 343 |
| 連続使用温度 | ℃ | 260 | – | – |
| 引張強度 | MPa | 約100 | 約170〜180 | 約220〜260 |
| 荷重たわみ温度(1.8MPa) | ℃ | 約150 | 300以上 | 300以上 |
| 難燃性 | – | UL94 V-0 | UL94 V-0 | UL94 V-0 |
※数値はメーカー各社の公表値をもとにした代表的な目安であり、保証値ではありません。グレード・試験条件・厚みにより異なります。設計の際は各グレードの技術データシートをご確認ください。
PEEKは非常に高性能な材料ですが、万能ではありません。採用を検討する際は、メリットとデメリットの両方を把握しておくことが大切です。
特にコスト面は、採用可否を分ける最大のポイントです。求められる耐熱温度や耐薬品性によっては、PPSなど比較的安価なスーパーエンプラで十分な場合もあります。次の章で、代表的な樹脂との違いを整理します。
PEEKの検討時に比較対象となることが多い樹脂との違いを、以下にまとめました。
| 樹脂 | 連続使用温度 (目安) | 耐薬品性 | 機械強度 | 溶融成形 | 価格帯 (相対) |
|---|---|---|---|---|---|
| PEEK | 260℃ | ◎ | ◎ | ○(高温が必要) | 高 |
| PPS | 200〜220℃ | ◎ | ○ | ◎ | 中 |
| PEI | 約170℃ | △〜○ | ○ | ◎ | 中〜高 |
| PI(非熱可塑性) | 260〜300℃ | ○ | ○ | ×(焼結・切削) | 最高 |
| PTFE | 260℃ | ◎(最高) | △ | ×(圧縮成形) | 中 |
※一般的な傾向を示したもので、グレードや配合により大きく異なります。
PPS(ポリフェニレンサルファイド)は、耐薬品性・難燃性に優れ、PEEKより大幅に安価なスーパーエンプラです。一方、連続使用温度はPEEKより低く、靭性(粘り強さ)や耐疲労性でもPEEKが上回ります。200℃程度までの環境で、靭性がそれほど求められない部品であれば、PPSがコスト面で有利になるケースが多くあります。
PEI(ポリエーテルイミド)は非晶性の樹脂で、寸法安定性や難燃性に優れます。ただし結晶性のPEEKに比べると、連続使用温度が低く、一部の溶剤に対する耐性も劣ります。耐熱200℃以下で寸法精度を重視する用途では、PEIが選ばれることがあります。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、連続使用温度はPEEKと同等で、耐薬品性と低摩擦性では樹脂の中でもトップクラスです。一方で機械強度が低く、荷重がかかるとクリープ(変形)しやすいほか、溶融成形ができず圧縮成形や切削加工が中心になります。「強度・剛性が必要ならPEEK、薬品環境と低摩擦を最優先するならPTFE」が基本的な使い分けです。PEEKにPTFEを配合し、両者の長所を組み合わせた摺動グレードもあります。
その信頼性の高さから、PEEKは以下のような最先端分野で活躍しています。
| 分野 | 主な部品 | 求められる特性 |
|---|---|---|
| 半導体製造装置 | 洗浄工程の治具、ウェハキャリア | 高純度、耐薬品性 |
| 航空宇宙 | 航空機のブラケット、エンジン周辺部品 | 軽量化による燃費向上、難燃・低発煙 |
| 医療機器 | 手術器具、歯科用パーツ、インプラント | 生体適合性、滅菌耐性 |
| 自動車 | トランスミッション用シールリング、ベアリング、ギア | 耐熱性、耐摩耗性 |
| エネルギー | 石油・ガス掘削装置のシール材 | 高温高圧環境への対応 |
| 電気・電子 | コネクタ、絶縁部品、電線被覆 | 耐熱性、絶縁性、難燃性 |
PEEKは熱可塑性樹脂のため、さまざまな方法で成形・加工できます。ただし加工温度が高いため、設備や条件には一般的なエンプラ以上の注意が必要です。
| 加工方法 | 主な製品形態 | ポイント |
|---|---|---|
| 射出成形 | ギア、シールリング、コネクタなどの量産部品 | 高温対応の成形機が必要。金型温度を高めに管理し、結晶化を十分に進めることが重要 |
| 押出成形 | 丸棒・板、フィルム、チューブ、電線被覆 | 高粘度(高分子量)グレードが適する |
| 圧縮成形 | 大型ブロック、厚肉の素材 | 射出成形が難しい大型・厚肉品に対応 |
| 切削加工 | 丸棒・板からの削り出し部品 | 試作や少量生産向け。内部応力を除くためのアニール処理が有効 |
| 3Dプリント | 試作品、少量の複雑形状部品 | フィラメント(FFF方式)やパウダー(SLS方式)を使用 |
| 複合材成形 | CF/PEEKのプリプレグ・積層板 | 航空機など高強度が必要な構造部材に使用 |
また、PEEKはわずかに吸湿するため、成形前には十分な予備乾燥が必要です。炭素繊維との複合材の成形工法については、CFRP・CFRTPの主要成形工法と技術的特徴もあわせてご覧ください。
用途に合わせて、最適なグレードを選択することが重要です。主に「分子量」「形状」「コンパウンド(複合樹脂)」の3つの観点で選びます。
当社で取り扱うPEEKコンパウンドのラインナップは、PEEK樹脂コンパウンドの製品ページでご紹介しています。金属からの置き換えを検討する際のベース樹脂の考え方は、金属代替に適したベース樹脂の選び方も参考になります。
PEEKのベースポリマーを製造できるメーカーは世界でも限られており、Evonik、Syensqo(旧Solvay Specialty Polymers)、Victrexなどが知られています。さらに、これらのベースポリマーに繊維や添加剤を配合するコンパウンドメーカーが、用途別の多様なグレードを供給しています。
PEEKの調達先を選ぶ際は、次のような観点で比較することが大切です。
当社取扱いのPEEK
ZYPEEK
優れたコスト競争力と安定した品質を両立したPEEK樹脂です。
PEEKの読み方は?
「ピーク」と読みます。正式名称はポリエーテルエーテルケトン(PolyEtherEtherKetone)です。
PEEKとPTFE(テフロン)はどちらを選ぶべきですか?
強度・剛性や寸法安定性が必要な部品にはPEEK、強い薬品にさらされる環境や、低摩擦性を最優先する用途にはPTFEが適しています。両方の特性が必要な場合は、PTFEを配合したPEEKの摺動グレードも選択肢になります。
PEEKはなぜ価格が高いのですか?
原料や重合プロセスが特殊で、製造できるメーカーが限られているためです。コストを抑えたい場合は、要求性能を満たす範囲でPPSなど他の樹脂を検討する、必要な部分だけPEEKを使う、複数メーカーのグレードを比較する、といった方法があります。
PEEKは金属の代わりになりますか?
多くの用途で金属代替の実績があります。PEEKの比重は約1.3と、鉄(約7.9)の約1/6、アルミニウム(約2.7)の半分以下で、炭素繊維で強化すれば高い強度も得られます。ただし剛性や耐熱の限界は金属に及ばないため、使用条件に応じた設計とグレード選定が必要です。
食品や医療の用途にも使えますか?
食品接触用途の規格(米国FDAなど)に適合したグレードや、医療用途向けのグレードがあります。ただし、適合状況はグレードごとに異なるため、用途に応じて個別に確認が必要です。
PEEKは切削加工できますか?
可能です。丸棒や板材からの削り出しは、試作や少量生産でよく使われます。加工後の変形を抑えるため、素材や加工品にアニール処理を行うのが一般的です。
PEEK樹脂は非常に高性能ですが、その分コストも高く、適切なグレード選定がプロジェクトの成否を分けます。
株式会社アークプラスでは、炭素繊維チョップやPTFE、各種添加剤の取り扱い知見を活かし、単なる樹脂の販売だけでなく、特定の機能を付加したコンパウンドのご提案も得意としております。
金属からPEEKへ代替したいが、どのグレードが良いか
海外メーカー品を含めてコストを最適化したい
サステナブルの観点からも検討したい
といったご要望がございましたら、お気軽にご相談ください。
お問い合わせは、右記フォームからお願いいたします。