プラスチック成形 化学発泡 vs 物理発泡の比較

技術情報

プラスチック製品の設計・製造において、近年の原材料価格の高騰やカーボンニュートラル(GX)への対応は避けて通れない課題です。

その解決策として注目される「発泡成形」ですが、導入検討の際に必ず議論に上がるのが「化学発泡」と「物理発泡」の選択です。

本記事では、技術的なメカニズムから導入コスト、運用面でのメリット・デメリットを第三者的視点で比較解説します。

貴社の製品特性や生産環境に最適な技術選定の判断材料としてご活用ください。

発泡成形がもたらす主要なメリット

比較の前に、なぜ今プラスチックの発泡成形が求められているのか、その主な目的を整理します。

  • 軽量化(樹脂量の削減): 密度を下げることで、製品の重量を5〜30%程度削減
  • 寸法の安定化: 内部からの発泡圧により、肉厚部での「ヒケ」や「反り」を抑制
  • 成形サイクルの短縮: 樹脂量の削減と保圧工程の簡略化により、生産効率が向上
  • 環境負荷の低減: 樹脂使用量の削減により、製造工程におけるCO2排出量を抑制

化学発泡の技術的特長

化学発泡は、樹脂に添加した発泡剤が加熱により化学分解を起こし、ガスを発生させる手法です。
特にマスターバッチ(MB)形式は、現在の成形現場で最も現実的な選択肢として普及しています。

運用の柔軟性とスピード

最大の特徴は、「既存の設備をそのまま流用できる」点にあります。

専用の成形機や大規模な付帯設備を導入する必要がなく、通常の樹脂材料と同様にホッパーへ投入するだけでテストが可能です。
この「スモールスタート」ができる点は、開発スピードが求められる現代の製品作りにおいて極めて大きなアドバンテージです。

進化する化学発泡剤

「外観が損なわれる」「残渣(かす)が金型を汚す」といった過去の課題は、最新のマスターバッチ技術で解決されつつあります。

吸熱型発泡剤
分解時に熱を奪う反応を利用し、微細な気泡形成とサイクル短縮を両立。
発生ガスの安全性が高いのも特徴

高分散処方
表面のスワールマーク(銀条)を最小限に抑え、意匠性の高い製品にも対応

物理発泡の技術的特長

物理発泡は、炭酸ガスや窒素などの不活性ガスを、超臨界状態などで直接溶融樹脂に注入する手法です。

究極のクリーンと高発泡

化学反応を伴わないため、分解残渣が発生しません。
そのため、医療機器など極めて高いクリーン度が求められる製品に適しています。
また、技術的な難易度は高いものの、超高倍率発泡も理論上可能です。

高い導入ハードル

物理発泡を導入する場合、専用のガス注入ユニット、特殊なスクリュ構造を持つ成形機、さらにそれらを制御する高度な技術ノウハウが必要となります。
数千万円規模の初期投資と、高圧ガスを取り扱うための保守点検コストが継続的に発生するため、投資回収(ROI)のシミュレーションは非常にシビアになります。

技術比較サマリー

比較項目 化学発泡マスターバッチ 物理発泡技術
初期投資 不要
既存の汎用機で即導入が可能
多額(数千万円単位)
専用機・周辺装置が必要
技術習得コスト 低い
添加量の調整が主目的
高い
ガス圧・注入タイミングの制御
メンテナンス 通常の成形機管理と同等 ガス供給系の法定点検・
専門メンテナンスが必要
製品の自由度 高い
金型や成形機の制限が少ない
限定的
専用設備に依存する
リサイクル性 良好
(最新の低残渣タイプの場合)
非常に良好
(ガスが残留しないため)
適した生産背景 多品種中少量から量産まで
柔軟な運用が可能
超大量生産
または特殊機能品

まとめ

物理発泡は、理論的には優れたクリーン性を持ちますが、設備投資の重さと運用の複雑さがネックとなり、導入できる企業や製品が限られるのが実情です。

一方で化学発泡マスターバッチは、

  • 投資リスクを最小限に抑えつつ、
  • 現場のオペレーションを変えずに、
  • 軽量化や歩留まり改善という直接的な利益を得る

という点で、多くの製造現場において最も費用対効果(ROI)に優れたソリューションと言えます。

製品のグレードアップやコストダウンを検討される際は、まず化学発泡マスターバッチでの試作から着手し、その効果を検証することが、最短かつ低リスクな技術開発のステップとなります。

*本記事では一般的な比較を掲載していますが、樹脂の種類(PP, PE, ABS, PA等)や成形方法(射出、押出)によって最適な発泡処方は異なりますこと、ご了承ください。

 

 

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