
アンチモン三酸化物(ATO/三酸化二アンチモン)は難燃システムの相乗剤として広く使われていますが、近年は国際的な原料需給の変化により、調達価格や納期が不安定になりやすい原料のひとつになっています。
「ATOの調達が読みにくい」「アンチモンフリーの難燃システムに切り替えられないか」といったご相談が増えています。
一口に難燃剤といっても、ハロゲン系・ハロゲンフリー系、対応樹脂、加工方法(押出/射出)などによって最適な選定は大きく異なります。本ページでは、ドイツ・LEHVOSS Groupが展開する難燃剤マスターバッチ「LUVOBATCH® FR」シリーズの仕組みと、ATOに依存しない選択肢を含めた製品ラインナップをご紹介します。
難燃剤はどのように材料を燃えにくくするのか
難燃システムは、物理的・化学的なさまざまなメカニズムを通じて、燃焼中または進行中の火災に影響を与えます。代表的な作用としては、製品中の可燃性材料の割合(火災荷重)を低減する方法があります。
また、熱・物質・ガスの移動を妨げる保護層を形成し、火災への”燃料供給”を断つ方法などもあります。難燃剤は、火災の発生を防止または遅延させることを目的として使用され、消火活動や避難の可能性を高めます。
アンチモン三酸化物(ATO)の調達不安、どう向き合うか
ハロゲン系難燃剤の多くは、アンチモン三酸化物を相乗剤として併用することで少ない添加量でも高い難燃効果を発揮します。そのため、これまで多くの製品設計がATOの安定供給を前提に組まれてきました。
しかし特定国・特定産地への依存度が高い原料であるため、価格変動や入手性の変化が調達計画に影響を与えるケースが増えています。
こうした状況を踏まえ、LUVOBATCH® FRシリーズでは2つの方向でお客様の調達リスク分散をサポートしています。
①正規サプライチェーンを通じたATOマスターバッチの安定供給
②ATOを使用しないハロゲンフリー難燃システムへの切り替え
既存配合からの切り替えは物性・難燃等級への影響を伴うため、テクニカルセンターでの試験データに基づいたご提案が可能です。
ハロゲン系とハロゲンフリー、2つの難燃システム
「難燃剤」という用語は、火災時の作用メカニズムによって定義されるため、その背景には非常に多様な材料クラスが存在します。ハロゲン系難燃システムは広く普及しており、主に臭素系化合物が使用されます。高い効果を発揮するためアンチモン三酸化物などの相乗剤と併用されることが多く、添加量を抑えられることから最終製品の他の重要な物性への影響も比較的少なく抑えられます。
一方、特定の用途で使用が義務付けられている、あるいは推奨されるハロゲンフリー難燃システムは、窒素系・リン系、そして無機系添加剤に大別されます。もう一つのクラスとして、火災時に材料が発泡して安定した保護層を形成する「膨張系(インチューメセント)」システムもあります。
ATOを使用しないアンチモンフリー配合が可能な材料クラスも含まれており、最終製品や用途、遵守すべき規制の要件に応じて、個別に材料クラスが選定されます。
マスターバッチ・コンパウンドの2つの形態で提供
LUVOBATCH® FRシリーズは、キャリア樹脂と必要に応じた追加添加剤とともに加工されるマスターバッチ製品です。マスターバッチは、要求される添加量や配合成分の変更などに対して高い柔軟性を発揮します。
また、そのまま使用できるPP難燃コンパウンド(LUVOGARD®)も合わせてご用意しています。
マスターバッチ、コンパウンドのいずれを選択された場合でも、製品は粒状形態でご提供され、容易かつ安全に加工いただけます。分散性に優れ、計量も容易でダストフリーでの作業が可能です。
アンチモン三酸化物マスターバッチによる安全な取り扱い
引き続きATOを使用した配合をご希望の場合も、ダストフリーのマスターバッチ形態でご提供することで、原料そのものを取り扱うよりも安全かつ効率的な導入が可能です。
アンチモン三酸化物は、ハロゲン系難燃剤と組み合わせることで高い効果を発揮する相乗剤ですが、生産設備においては粉じん限界値に関する高い安全要件が求められます。
この課題を解決するため、LEHVOSSではEVAやPBTなどさまざまなキャリア樹脂によるダストフリーのマスターバッチ製品をご用意しており、許容ばく露限界値の低い粉体を安全に取り扱うことができます。
自社テクニカルセンターによる難燃試験体制
最終用途に適した難燃システムの選定は、さまざまな基準に左右されます。すべての難燃システムがあらゆる樹脂に適合するわけではなく、また製品の重要な物性(機械的特性や色調など)に望ましくない影響を与える可能性もあります。
LEHVOSSでは自社のテクニカルセンター・ラボにおいて、垂直燃焼試験UL94(IEC/DIN EN 60695-11-10)、酸素指数LOI(限界酸素指数、ISO 4589-2)、DIN 4102に基づくB2試験(DIN EN 13501(D/E)相当)など複数の難燃試験を実施しています。
これにより配合開発の成否を確認したり、他の原材料が難燃性に与える影響を検証したりすることができます。
ハロゲンフリー製品ラインナップ(ATOを使用しない代替候補・一部抜粋)
| LUVOBATCH® | 対応樹脂 | UL94 / DIN4201 | 用途例 |
|---|---|---|---|
| PP FR 0234 | PP | 3-8% | パイプ、シート。低ハロゲン含有量のPP向け特化マスターバッチ |
| PE FR 4011 | PE | 1-5% | 薄物用途(フィルム等)向け特化マスターバッチ |
| PP FR 0400 | PP | 5-10% | シート、異形材、パイプ、射出成形品 |
| PP FR 0018 | PP | ≧25% | 厚肉部品(シート、異形材等) |
| PA FR 0014 | PA6 | 2-5% / 7-10% | シート、パイプ、射出成形品。PA6向け特化マスターバッチ |
| PA FR 0266 | PA12 | 10-15% / ≧20% | パイプ、チューブ、ケーブル、射出成形品。PA12向け特化マスターバッチ |
| PET FR 0379 | PET, PET-G, PBT | ≧25% | 繊維、フィルム、シート、厚肉用途、射出成形品。透明PET向け特化マスターバッチ |
| PW FR 1152 | PE, PP, EVA, TPE-O | ≧15% | マスターバッチ・コンパウンド向け粉体製品 |
※上記は代表的な製品の抜粋です。結果は材料・加工条件・形状によって異なるため、最終製品での試験確認が必要です。
ハロゲン系製品ラインナップ(一部抜粋)
| LUVOBATCH® | 対応樹脂 | V-2 | V-0 | 用途例 |
|---|---|---|---|---|
| PE FR 1150 | PE, PP | 7-10% | ≧20% | フィルム、パイプ、シート、厚肉用途、射出成形品 |
| PE FR 4775 | PE, PP | 10-15% | ≧20% | フィルム、パイプ。屋外用途に適する(耐UV性強化) |
| PP FR 6142 | PP | 5-10% | ≧15% | パイプ押出、射出成形品。薄肉部品、PP向け特化 |
| UC FR 7525 | ABS, PA6+30%GF / PA6, PS, PBT / PC | ≧20% / ≧25% / ≧15% / 10% | ― | 汎用難燃マスターバッチ。各種樹脂に対応可 |
| EV FR 1106 | PE / EVA | 7-10% / 8-10% | ≧25% | フィルム、ケーブル。PVCへの使用にも適する |
※UL94(V-2/V-0)の各欄は該当する数値・推奨添加量目安です。結果は材料・加工条件・形状によって異なるため、最終製品での試験確認が必要です。
まとめ:LUVOBATCH® FRシリーズのポイント
- ATOの調達不安・価格変動に対し、安定供給とハロゲンフリー代替の両面でリスク分散が可能
- ハロゲン系・ハロゲンフリー系の両方に対応した幅広い難燃システムをラインナップ
- PE・PP・PA・PET・EVA・ABSなど主要樹脂に対応するマスターバッチを用意
- そのまま使用できるPP難燃コンパウンド(LUVOGARD®)も選択可能
- アンチモン三酸化物を使用する場合も、ダストフリーのマスターバッチ形態で安全に取り扱い可能
- UL94・LOI・B2など自社テクニカルセンターでの難燃試験に基づく開発体制
- 1894年創業、ドイツ・ハンブルクのLEHVOSS Groupが50年以上にわたり製造・販売
当社アークプラスは、LEHVOSS Group「LUVOBATCH®」の日本国内正規販売代理店として、難燃剤マスターバッチのご提案から配合検討、サンプルワークまでサポートいたします。
アンチモン三酸化物(ATO)の調達を継続したい場合はもちろん、供給面のリスクを分散したい、ハロゲンフリー配合への切り替えを検討したいといったご相談にも、樹脂・要求規格(UL94、DIN4201など)・加工方法に応じた最適な製品選定でお応えします。
LUVOBATCH® 難燃剤マスターバッチのご相談
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