金属代替に適したベース樹脂の選び方|PA・PPA・PPS・PEI・PEEK比較

技術情報

「どのベース樹脂を選べばいいか分からない」——金属代替や構造部品への樹脂化を検討する際、最初にぶつかる問いです。
使用温度・吸水率・耐薬品性・コストによって最適な樹脂は大きく異なります。
このページでは、構造用途・金属代替に適した代表的な5種類の熱可塑性樹脂の特性を整理し、選定の考え方を解説します。

PA・PPA・PPS・PEI・PEEKを耐熱性・吸水率・耐薬品性・コストで整理。金属代替・構造部品への樹脂選定の判断基準を解説します。

PA
ポリアミド / Polyamide(PA6・PA66)

最も実績が豊富な汎用エンプラ。摺動性と機械特性のバランスが良い

優れた機械特性 摺動特性◎ 低コスト 吸水性あり(設計で対応可)
Tg(PA66)60〜70℃
融点(PA66)260℃
最大吸水率(50%RH・PA66)2.8%

PA6・PA66は、構造部品や金属代替に最も広く採用されている汎用エンジニアリングプラスチックです。優れた機械特性・摺動特性を持ち、有機溶剤・油・脂肪類への耐化学品性も良好です。

吸水性はポリアミド全般に共通する既知の特性であり、設計段階で織り込み済みの挙動です。炭素繊維で強化したCF強化コンパウンドを採用することで寸法安定性・剛性を大きく向上させることができ、より厳しい環境条件への対応も可能になります。

🎯 PAを選ぶべき用途

コスト重視の汎用構造部品、摺動・耐摩耗が要求されるギア・スライダー・ベアリング類、自動車内装・産業機械の量産部品

PPA
ポリフタルアミド / Polyphthalamide(PPA)

PAの上位互換。低吸水・高耐熱・高耐薬品でエンジン周りに強い

低吸水(0.1〜0.3%) Tg 約125〜135℃ 耐燃料・耐油・耐硫酸 高寸法安定性 PAより高コスト
Tg(PA6T/6I)約125〜135℃
最大吸水率(50%RH)0.1〜0.3%
水中最大吸水率(参考・PA6T/6I)7.0%

PPAは部分芳香族・部分結晶性のポリアミド系樹脂で、PAの特性を大きく上回る耐熱性と低吸水性を持ちます。ガラス転移温度(Tg)はPA6T/6Iで約125〜135℃(グレード・共重合比により異なる)で、PA66の60〜70℃を大きく上回ります。高温下での寸法精度と強度の安定性はPAより優れています。

耐薬品性も優秀で、燃料・ブレーキオイル・合成エンジン油・変速機油・グリコール・硫酸・凍結防止剤(ロードソルト)に対する耐性が確認されています。これにより自動車のエンジン・トランスミッション周りの金属代替材として幅広く採用されています。

CF強化したPPAコンパウンドは引張強度420MPa・弾性率50 GPaを実現しており、炭素繊維による補強効果が出やすい樹脂です。

🎯 PPAを選ぶべき用途

自動車エンジン・トランスミッション周りの金属代替部品、燃料系・油圧系の精密部品、高温・油脂環境の摺動コンポーネント

PPS
ポリフェニレンサルファイド / Polyphenylene Sulfide(PPS)

連続220℃・固有難燃・化学耐性◎。過酷環境の構造部品に

連続使用220℃ 固有難燃性 低吸水・高寸法安定 耐薬品性 靭性はやや低(架橋型)
連続使用温度220℃
Tg約90℃
吸水率極低

PPSは芳香族分子を硫黄(スルフィド)結合でつないだ半結晶性の高性能樹脂です。連続使用温度220℃・固有難燃性という特性を持ち、難燃材料として別途処理が不要です。

耐薬品性は特に優秀で、ほぼすべての溶剤・多数の酸・アルカリに対して優れた耐性を発揮します。液体・ガスの透過性も低く、高温下でのクリープも少ないため、複雑形状の長尺・細形部品への対応も可能です。線形PPSは高い靭性と破断伸びを持ち、架橋型PPSとで機械特性に差があります。

CF強化によってさらに高い剛性・強度を付与でき、金属部品の代替として多くの産業機械・自動車・電気電子用途で採用実績があります。

🎯 PPSを選ぶべき用途

高温・腐食環境の精密部品、難燃認証が必要な電気電子部品、化学プラントや自動車の過酷環境コンポーネント

PEI
ポリエーテルイミド / Polyetherimide(PEI)

非晶性・固有難燃・高電気特性。耐加水分解と安定した電気絶縁に

固有難燃(低発煙) 高誘電特性 耐アルコール・酸 耐加水分解性 非晶性(耐化学品に限界)
連続使用温度(長期)170℃
連続使用温度(短期)200℃超
Tg220℃

PEIは高誘電強度を持つ非晶性の高性能エンプラで、固有難燃性(低発煙・低煙密度)を持ちます。長期170℃・短期200℃超の耐熱性を発揮し、Tgは220℃に達します。

電気特性が広い周波数域で安定しているため、高周波用電気・電子部品に向いています。アルコール・酸・炭化水素系溶剤への耐性および耐加水分解性を持ちますが、非晶性のため一部溶剤には注意が必要です。

🎯 PEIを選ぶべき用途

高周波・高絶縁が要求される電気電子部品、医療・食品向け難燃部品(γ線・X線照射対応グレードも存在)、高温下での精密成形部品

PEEK
ポリアリールエーテルケトン / PAEK(PEEK・PEKK・PEK)

熱可塑性樹脂の頂点。耐熱・耐薬品・機械特性すべてが最高水準

連続260℃ 最高の機械特性 耐γ線・X線 耐加水分解(〜280℃) 摺動特性◎ 高コスト
連続使用温度約260℃
PEEK Tg143℃
PEEK 融点343℃
PEKK Tg160〜165℃
PEK 融点373℃

PAEK(PEEK・PEKK・PEK)は熱可塑性樹脂の中で最も高い性能を持つスーパーエンプラです。ケトン基(R-CO-R)とエーテル基(R-O-R)が交互に連なる分子構造を持ち、高温安定性・高機械強度・優れた耐薬品性・高摺動特性・優れた難燃性を兼ね備えます。

PEEKは多くの有機・無機化学品への耐性を持ち、γ線・X線などの高エネルギー電磁波にも耐えます。耐加水分解性は280℃まで確認されており、水蒸気・高圧蒸気環境でも使用可能です。LEHVOSSはこのPEEKで400種以上のコンパウンドを展開しており、CF強化時の弾性率は最大56 GPaを達成しています。

コストは熱可塑性樹脂の中で最高水準ですが、性能・長寿命・メンテナンスフリーの観点からトータルコストで優位になるケースが多く、航空・医療・半導体製造など高信頼性が求められる分野で採用が進んでいます。

🎯 PEEKを選ぶべき用途

航空・宇宙・医療・半導体向けの最高信頼性部品、高温蒸気・薬液環境の精密部品、極限の軽量化と高剛性が求められる構造部品

構造用途・金属代替 ベース樹脂 特性比較表

比較項目 PA PPA PPS PEI PEEK
連続使用温度 〜120℃ 150〜170℃ 220℃ 170℃(長期) 約260℃
ガラス転移温度(Tg) 60〜70℃ 125〜135℃ 約90℃ 220℃ 143℃
吸水率(50%RH) 2.8%(PA66) 0.1〜0.3% 極低 低い 極低
耐薬品性 油・有機溶剤 燃料・油脂・酸 ほぼ全薬品 酸・アルコール・油 有機・無機薬品全般
難燃性 △(添加剤必要) △(添加剤必要) ◎ 固有難燃 ◎ 固有難燃(低発煙)
摺動特性 ◎ 最高水準
コスト感 低い 中〜高 中〜高 高い

※ Tg・吸水率・連続使用温度はLEHVOSS技術資料に基づく参考値。グレード・強化材の配合により異なります。

まとめ:用途別 ベース樹脂の選定指針

  • コスト重視・汎用構造部品 → PA(PA66)が出発点。CF強化で金属代替の第一候補
  • 高温・油脂・燃料環境(〜170℃) → PPA。低吸水・高耐薬品・高寸法安定性で自動車部品に最適
  • 連続220℃・難燃・化学耐性が必要 → PPS。固有難燃で過酷環境の構造部品に対応
  • 高絶縁・広周波数域での安定電気特性 → PEI。難燃・耐加水分解で電気電子・医療向け
  • 最高性能・高信頼性・260℃超 → PEEK/PAEK。航空・医療・半導体向けの最終選択肢

ベース樹脂の種類は出発点に過ぎません。実際の性能は、CF・GFなどの強化繊維の種類と配合量、潤滑剤・導電材などの添加剤設計によって大きく変わります。当社ではLEHVOSSグループのLUVOCOMコンパウンドを通じて、PA・PPA・PPS・PEI・PEEKすべてのベース樹脂に対応した各種CF強化グレードを取り扱っており、用途に応じた材料選定のご相談・サンプル手配に対応しています。

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