消防・SARヘルメット用 長繊維強化PA66

製品紹介

消防・SAR(捜索救助)ヘルメットの外殻向けに開発された長ガラス繊維強化PA66「LUVOCOM LFT 1-8867GF07NT」の特長・物性・成形条件

消防、林業、捜索救助、製鉄所――。過酷な現場で使われるヘルメットの外殻には、衝撃に耐える強さと剛性に加えて、燃えにくさや、万一破損したときの安全性まで求められます。LEHVOSS社の「LUVOCOM LFT 1-8867GF07NT」は、こうした特殊ヘルメットの外殻用に開発された、PA66ベースの長ガラス繊維強化コンパウンドです。難燃剤に頼らずに燃焼性要求へ対応できる点が大きな特長で、この記事ではカタログと技術データシート(TDS)をもとに、その中身を整理します。

POINT1

PA66×長ガラス繊維×靭性改質。強さ・剛性・耐衝撃性のバランス設計

本グレードは、PA66(ポリアミド66)を長ガラス繊維で強化し、さらに耐衝撃性が出るよう靭性改質を施した材料です。TDS上の繊維含有量は30%、比重は1.35 g/cm³で、熱安定化されたナチュラル色(白)として供給されます。カタログでは「衝撃強度・引張強度・剛性のバランスが取れた特性」を特長としており、TDSの主な特長欄でも「強く、剛性が高く、耐衝撃性に優れた部品向け。特に動的な応力がかかる用途に適する」とされています。

POINT2

数値で見る機械特性:低温でも衝撃値が大きく落ちない

ヘルメットの外殻では、強度と剛性だけでなく衝撃を吸収する力が重要です。TDSの代表値では、ノッチ付シャルピー衝撃強さが乾燥時30 kJ/m²、調湿時33 kJ/m²です。−30°Cでのノッチ付衝撃強さも27 kJ/m²と、常温の値から大きくは低下していません。一方で、PA66は吸湿すると剛性や強度が下がる性質があり、本グレードでも調湿状態(23°C/50%rh)では乾燥時より引張強度で約15%、剛性の目安となる曲げ弾性率で約27%低い値になっています(TDSの代表値から当社で算出)。設計時は、使用環境で想定される吸湿状態の値で検討することが大切です。

主な機械特性(TDS代表値)

項目試験法単位乾燥時調湿時
(23°C/50%rh)
引張強度ISO 527MPa205175
曲げ弾性率ISO 178GPa96.6
シャルピー衝撃強さ(ノッチ付)ISO 179 1eAkJ/m²3033
シャルピー衝撃強さ(ノッチ付、−30°C)ISO 179 1eAkJ/m²27

※ 本データはLEHVOSS社のPRELIMINARY(暫定)データシートに記載された代表値であり、保証値ではありません。

POINT3

熱特性:荷重たわみ温度255°C、連続使用温度110°C

熱特性では、荷重たわみ温度(HDT A、ISO 75)が255°C、連続使用温度が110°C(20,000時間、IEC 60216)、寿命中の最大200時間までの短時間許容温度が150°Cとされています。高温にさらされる可能性のある現場で使うヘルメットでは、こうした耐熱性の目安は材料選定の出発点になります。ただし、ヘルメットとしての耐熱・耐炎性能は製品設計や適用規格の試験で確認する必要があります。

POINT4

難燃剤を使わない設計がもたらす付加価値

カタログでは、他の材料(例:PA66)と比べた本グレードの付加価値として、難燃剤(例:赤リン)を使用せずに燃焼性の要求事項を満たせることを挙げています。難燃剤が不要になることで、成形・使用・廃棄の各段階にメリットが生まれます。下表はカタログの記載内容を整理したものです。

カタログ記載の付加価値(難燃剤を添加した材料との比較)

観点難燃剤を添加した材料で懸念される点LUVOCOM LFT 1-8867GF07NT
燃焼性難燃剤(赤リン等)の添加で対応難燃剤を使わずに燃焼性要求を満たす
金型難燃剤に起因する金型腐食難燃剤由来の金型腐食なし
製造・使用時の安全性有毒な難燃剤のアウトガス(高温多湿でホスフィン生成)製造時・使用時とも、難燃剤のアウトガスなし
薄肉化—充填性が良く、肉厚の最適化が可能
破損時の安全性—損傷・亀裂時に隊員を傷つける破片が飛散しない
塗装—塗装性が良好
リサイクル難燃剤を含むため廃棄処分が必要になる場合がある難燃剤を含まず、リサイクル可能(廃棄処分不要)

※ 燃焼性要求を満たすとの記載はカタログによるものです。TDS上のUL 94評価は1.6 mm厚でHB(括弧書きの参考値)で、ヘルメットに求められる燃焼性の規格・試験条件は用途や地域により異なるため、個別にご確認ください。

POINT5

成形加工のポイント:乾燥管理と摩耗対策

一般的な射出成形機で加工できますが、成形時の含水率は0.05%以下に管理する必要があります。超えると分子量低下や表面不良の原因になるため、成形直前に除湿乾燥機で予備乾燥を行います。また、ガラス繊維による摩耗が起こるため、シリンダとスクリューの摩耗対策も欠かせません。具体的な乾燥・成形条件はTDSに記載しています。お気軽にお問い合わせください。

まとめ:LUVOCOM LFT 1-8867GF07NTの要点

  • PA66ベース・長ガラス繊維30%・靭性改質の、ヘルメット外殻向けコンパウンド
  • 引張強度205 MPa、曲げ弾性率9 GPa、ノッチ付衝撃強さ30 kJ/m²(いずれも乾燥時)
  • −30°Cのノッチ付衝撃強さは27 kJ/m²(TDS代表値)
  • HDT A 255°C、連続使用温度110°C(20,000時間)
  • 難燃剤を使わずに燃焼性要求へ対応。金型腐食やアウトガスの懸念がなく、リサイクルも可能(カタログ記載)
  • 成形時は含水率0.05%以下の乾燥管理と、スクリュー・シリンダの摩耗対策が必要

ヘルメットの性能は、材料だけでなく部品設計との組み合わせで決まります。LEHVOSS社では、他のポリマーやフィラー含有量、カラーを変更したカスタマイズにも対応しています。アークプラスは日本代理店として、LUVOCOMシリーズのご提案から技術的なご相談まで承ります。用途や要求規格をお聞かせいただければ、最適なグレードをご提案します。

ヘルメット用途の材料選定をご検討の方へ

LUVOCOM LFTのTDSやサンプルのご相談を承ります。

お問い合わせ・資料請求

お問い合わせ

お問い合わせは、右記フォームからお願いいたします。